
文・写真 Toshiki Minamiguchi

忘れた頃にやってくるのでほんと困っているやつがいる。
口内炎だ。
じつを言うと、ここのところ、口内炎とは無縁で、もう、こいつとは付き合うこともないだろうと思っていた矢先、ふらり、と、彼(彼女)はやって来た。
そして、あいかわらず、いやな場所に居座って私を困らせるのだ。
朝起きた時と寝る前、そして毎食後には歯磨きをできるだけすることを習慣にしていたら、口内炎がまったくやって来なくなったので、ちょっと、気が大きくなりすぎていたのかもしれない。
原因は、彼(彼女)がやってくるまえぶれのひとつでもある、くちびるをがうっと噛んでしまったからだけど、さほど傷がついたわけじゃなかったので、まさか、の来訪だった。
中学生だった頃、口内炎のあまりの卑劣さに、いらだち、反撃したことがあった。
今考えると、あまりのばかばかしさに情けなくなってくるけれど、口内炎の痛みの元は表面の白い所にちがいないと思い、鏡を見ながらその白い表面を爪でけずったのである。
わあ、だ。
はじめ痛かったけどだんだん麻痺して途中からはそんなにたいしたことないさ、みたいな感じだったように思う。だけど、その後は、悲惨だったけど。
口内炎に薬があると知ったのは十代後半の頃だったろうか。ひどくうれしかった反面、こいつに薬を使うなんてやわだよなあと思ったりもした。
だから、今でも、あまり薬を塗ることはないのだけど、ただ、涼しい顔でさりげにやって来られた時には、痛さをこらえて笑いながら薬を塗ってみたくなるのである。
Right, there is nothing. #8 2009.6.14
